はじめに
本件について、これまでは受動的にしか情報を摂取してこなかった私だったが、傍聴に並び、はじめて能動的に情報を摂取しようとしている。
我ながら、「減刑」と「減軽」が分からなかった頃からの成長を感じる。
ここでは、傍聴の記録として私がとった傍聴メモをもとに、その公判の流れを記していきたい。
目標は「ネット記事より詳細に」だが、そこまでの自信はない…。
量でも質でも負けてどないすんねん!ってかんじだが、そもそもこちらは自己満の備忘録なのであるから、メディア媒体とは”ねじれの位置”にあるということにしておく。というか、そうだろう。
せっかくであるから、傍聴時の個人的な感情や見たことも記したい。
しかし、客観的な情報と主観的な情報が混ざるのは避けたいから、主観部分については青字で記すこととする。
第1回公判については、こちらをご覧いただきたい。
【本日のお品書き】
傍聴整理券配布・抽選
今朝は9:00頃に整理券の配布を受けた。
昨日(第1回公判)は、公園にあふれんばかりの傍聴希望者とマスコミがいたが、今日は半分以下に。
9:40 抽選結果発表。
あった…。。
さすがにヒマを持て余し、裁判所近くのカフェでコーヒーをいただいていたところ、裁判所HPにて当選の結果を見た。
一緒にきていた先輩とまさかの連番当選。
さながら大学入試の結果発表のような、歓喜の瞬間であった。
倍率は5倍と、昨日よりは落ち着いたものの、それでも高倍率に変わりなし。
そこで連番当選するとは、なかなかの強運である。おそらく先輩の年内の運は使い果たさせてもろた(笑)
裁判員裁判
総論
裁判は通常、裁判官1人または、右陪席,左陪席を含む合議体で行われる。(裁判所法18条,26条,31条の4,35条)
裁判員制度は2009年に始まった制度で、「裁判官の員数は三人、裁判員の員数は六人」(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(以下、法)2条2項)とされている。
そして、裁判員裁判の対象となるのは、原則として「死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件」(法2条1項1号)である。
本件は、殺人,現住建造物等放火など、「死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件」に該当するため、裁判員裁判となっている。
開廷前
増田啓祐裁判長を中心に、右陪席が男性,左陪席が女性の裁判官であった。
裁判員は全員で12名。男性が5名,女性が7名であった。
ここで疑問が生じる。「裁判官の員数は三人、裁判員の員数は六人」とする、法2条2項の文言である。
法10条1項及び2項を見る。
「裁判所は、…… 補充裁判員を置くことができる。ただし、補充裁判員の員数は、合議体を構成する裁判員の員数を超えることはできない。」(法10条1項)
「補充裁判員は、裁判員の関与する判断をするための審理に立ち合い、第二条第一項の合議体を構成する裁判員の員数に不足が生じた場合に、あらかじめ定める順序に従い、これに代わって、裁判員に選任される。」(法10条2項)
つまり、合議体を構成する6人の裁判員の員数を超えていない、6人の補充裁判員は審理に立ち会えるのである。
刺激的な証拠(遺体写真,現場映像)などは提出しないとの報道も目にしたが、年明けまでかかる長い公判であり途中で体調不良者がでることも考えられるため、法定いっぱいの補充裁判員を置いているのだろう。
私は以前、広島地裁で開かれた裁判員裁判の傍聴にいったことがあるが、その際は裁判員は6名であった。
補充も含めて12名入ることは異例なのだろうか、、
検察側から傍聴席前にかけて、L字型にアクリル板が設置されていた。
また、普段は灼熱と化す裁判所が、南極ばりの極寒であった。全身に重度熱傷を負い、移植したばかりの皮膚だから、体温調節しにくいことへの配慮かと考えられる。
開廷
10:33 車イスに乗った被告人(以下,A)が、官吏に押され入廷する。
長そで,長ズボンのジャージ姿で、マスクを着用。パウダーのようなもので顔が白く、肌の状態は一見普通にみえるが、マスクの下や首元にはヤケドの跡が赤く残っていた。
10:34 裁判長「開廷します。」
本日は、証拠調べの続き。
証拠番号11 捜査報告書 犯行時状況,道具の説明
・京アニ南側路地に携行缶2つ、その横にリュックサックが置かれていた。
携行缶の1つに19.87L、もう1つに4.20Lのガソリンが入っていた。
→携行缶は赤色で、法定のものであった。少し前までは、ガソリンスタンドでポリタンクのようなものにもガソリンを入れることができたが、今は法改正により赤い缶でないと入れることができない。
携行缶は20L容量の小さなものであるが、これを2つ持つとなるとなかなかの重さである。(空でも缶自体そこそこ重い)
2つの携行缶に残るガソリンの量からして、恐らく2つとも20L近く入れていたのだろう。
私が大学時代に所属してた部活でも、携行缶にガソリンを入れて持ち運ぶことがあるのだが、2つ持つのはかなりしんどい。よくシュラッグして僧帽筋を鍛えたものである。
・黒いバッグに柳刃包丁が1本出ている状態で置かれていた。バッグ内部には5本の包丁が入っていた。
刃体の長さは19~25cmほど
刃に磁石がついたことから、鋼質性である。
・京アニ正面出入口に台車とハンマーが置かれていた。
証拠番号12 救急搬送前のAの言動(音声)(文字起こし有り)
※若干飛んでるところ有り。全文は新聞記事へ。
警察官(以下、K) 「名前言えるか?」
A 「アオバ!」
K 「なんて??」
A 「アオバ!アオバシンジ!!」
K 「生年月日は?」
A 「53年5月16!」
K 「何やった?がんばれ!言え!!」
A 「パクられた!」「小説、パクられた」
K 「何でやった?」
A 「ガソリン!」
K 「何で火をつけた?」
A 「チャッカマン」
K 「どうした?どこで買った??」
K 「どこから来た?」
A 「埼玉!」
K 「ここがなにか知っているのか?」
A 「知らない!」
K 「なんでやったんだ!あなたには答える責任がある!!がんばれ!言え!」
A 「お前ら全部知ってるだろ!!」
A 「小説パクられた!」
K 「どこ住んでるの?」(背後で救急隊員の声が聞こえる)
A 「……」
K 「ガソリンどれくらい?」
A 「……」
→実際は動画で撮影されたものであったが、映像は映さず音声のみで、文字起こしされたKとAの会話がモニターには映されていた。
Aの火傷の程度から、死亡する可能性も十分にあっただろう。より多くの必要な情報を単語で聞いていくKの技術にただただ驚いた。
このような重大犯罪や被疑者が死亡する可能性のあるときは、高度な技術を持つ警察官が緊急で派遣されるのだろうか。それとも、この技術は皆が有する標準的なものなのだろうか。
どのような事実が必要か、ある程度のマニュアルが存在するにしても、現場でそれを実践することは容易ではないように思う。
Kの声は、腹部に力の入った太く力強い声であった。それでいて怒鳴ることなく聞き取りやすい声で、どれも1,2秒ほどの単語での問いかけであった。
Aが搬送されるまでのおよそ3分間
ここで集めた情報が、Aの意識回復までの捜査に大きな意味をもたらしたのではないだろうか。
Kに証人尋問の予定があるのなら、傍聴したいところである。あの現場で、どのような状況整理をしていたのだろうか。
また、被疑者をどのように特定したのだろうか。目撃者がいたのだろうか。その点疑問である。
証拠番号13 Aの生活面
S53.5.16 浦和にて出生
S60.4 小学校入学
H3 中学校入学→転校(H4)
→不登校, 父のしつけが厳格となる
他人がよってくるなと言ってくる気がする
H6 定時制高校に入学
H10 高校卒業後、音楽専門学校に通う→退学
→コンビニバイトをする
H11 父死亡
住侵,窃盗,暴行事件を起こす(下着泥棒して、女性に馬乗り)
→自分が上手くいかないのは、家族のせいだと主張
H19 懲役2年 執行猶予4年(保護観察付)
H20.12 母の居る茨城へ
H22.2 郵便局に勤める
→兄が前科ばらして居づらくなる
このころから怒りが抑えきれなくなった
「涼宮ハルヒ」シリーズの小説に感銘を受け、ライトノベルを書きだす
9 生活保護の需給開始
H24.6.5 強盗事件起こす
コンビニにて、刃物で店員を脅し、現金21000円を強取
→ムカついてイライラしたからした,社会のしがらみから逃げたかった
事件当時は秋葉原無差別殺人事件に感化され、無差別殺人を計画していた
同居していた母と兄にガソリンを撒いて殺そうと考えていた
統合失調症の診断を受ける
H29 どちらも落選
5.9 サイト「小説家になろう」に入会
短編小説を投稿,長編小説を分割して投稿
11 近所と騒音トラブルが増える
R1.6.18 包丁6本購入
→大宮駅前で大量殺人を計画したが断念
R1.7.18 本件発生
R2.5 逮捕・勾留
11:06 休廷
11:25 再開予定
続く。